青色の薔薇を観たことがありますか。交配による品種改良では薄いピンク色又は灰色程度にしかならず、特殊な液体を吸わせたり、直接花びらを染色したものでないかぎりこの世に存在しなかったそうです。英語でblue roseは不可能を意味していました。しかし最先端のバイオテクノロジーによる遺伝子組換技術を用いればできるはず。以来十数年の研究年月を経て、大手飲料メーカーの技術者たちが開発、環境への配慮から、2009年の発売まで更に数年の実験期間を要しました。花言葉は「奇跡」、「神の祝福」になったとか。技術者の努力が不可能を可能に変えた瞬間でありました。

 さて、企業が新技術や新製品を開発し、安定的に発展し成長するためには、毎期継続的に試験研究を行うことが必要です。そこで税法では、企業の試験研究を促進するために、以下の通り特典を設けています。
青色申告書を提出する法人の各事業年度において、試験研究費や特別試験研究費がある場合には、その試験研究費の額に最高12%の税額控除割合を乗じた金額を、その事業年度の法人税額の20%相当額を限度として、法人税額から控除することができます。
 試験研究費とは、製品の製造又は技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費、及び経費の他、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額をいいます。また特別試験研究費の額とは、試験研究費の内、国の試験研究機関又は大学と共同(委託)して行う試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究などにかかる費用をいいます。
 更に試験研究費の額が一定基準を超えて増加した場合には、上記限度額とは別枠で控除が認められる場合があります。

 古代ギリシャやローマでは、薔薇はうつくしさの象徴とされ、美の女神アフロディティやヴィーナスと結び付けられて、神話や絵画などに描かれてきました。その夫であるといわれている技術の神や、大地の女神などの神々は、人類の最先端の技術が生み出した新種を観て、結構やるなあと思ったでしょうか、神の領域を犯すべからずと思ったでしょうか。
 生態系への影響、倫理的な側面など、遺伝子組換技術による品種改良については、今なお多くの論争があります。blue roseについても、「すべての神の祝福」を受けた薔薇色の研究結果であるかどうかは、今後の推移を慎重に見極め判断する必要があります。
 しかし、この人類の創造物、なかなかきれいねと、美の女神だけはそっと祝福してくれそうな気がします。

2008.11.01
moritax.com-editor 税務コラム