毎年5月頃、長者番付の発表がありますが、この長者番付の発表は興味本位に行われているのではなく、税法に基づいて行われる制度です。ちなみに所得税法では年に1千万円を超える税額のあった人、法人税法では年間4千万円を超える所得をあげた法人ついて、その税額や所得等を公開することが定められています。

 では、どうしてこのような公示制度があるのかといえば、話は古く昭和25年にシャウプ勧告により税制の改正が行われましたが、この公示制度もその時にできました。それまでは誰もが申告書を閲覧でき、それによって脱税を見つけた人が通報するという制度が設けられましたが、それでは納税者にかえって協力が得られないとして所得の多い人を公開する制度に改められたのです。

 つまり元来所得の公示制度は、所得について情報を持っている人が公開された所得を見て過少であるかどうかチェックするために始められたものです。その後公示する金額の変遷はあったものの、制度そのものは引続いて残っているという訳です。

  ところで所得税では、かつては年に1千万円を超える所得のあった人を公示の対象としてきましたが、現在では、税額が年に1千万円を超える人を対象にしています。これにより公示対象者の数も以前に比べ、かなり減少しています。この為、公示制度の主旨もかなり後退したものとなり、他方、単なる長者番付として興味本位になりがちのこの制度のことを考えあわせれば、基本的に見直す必要があるのではないかと思います。

1999.10.01
moritax.com-editor 税務コラム